事務所ニュース [2019年12月号]

自然災害で損害を与えたときも賠償責任がありますか

弁護士 松森 彬

台風や地震で自宅の塀が倒れたり、屋根瓦が落ちたりして、隣の家や自動車を損傷したときに、賠償する法的な責任はあるでしょうか。

今年9月に千葉県を襲った台風15号で、ゴルフ練習場の高い柱が多数折れて近くの民家が何軒も損壊するという事故がありました。柱の撤去は終わったようですが、話し合いはこれから行われるようです。また、昨年9月に大阪を襲った台風21号のときは、大阪の多くの弁護士が相談を受けました。

 

1 通常の安全性を備えていたか

建物やブロック塀などが、備えているべき安全性を備えていなかったために、他人に損害を与えたときは、賠償する責任があります。

他方、通常の安全性を備えていましたが、たまたまその台風や地震が通常の想定を超える大規模なものであったために塀が倒れたり、瓦が飛んだりしたときは責任はありません。

民法(717条)は、建物や塀など(これを土地の工作物といいます)の設置又は保存に「瑕疵」(通常備えている安全性が無いこと)があるときは、賠償責任があると定めていますので、上記のような原則になります。

 

2 具体的な事例を見てみます

台風で工場の屋根や外壁が飛ばされ、近くに駐車していた自動車にあたって損傷を与えた事件がありました。工場は約10年間稼働しておらず、老朽化していました。裁判所は、建物の安全確保の措置が不十分であったとして、工場に損害賠償責任があると判断しました(福岡地裁久留米支部平成元年6月29日判決)。

また、台風で全面ガラス張りの温室のガラスが割れて飛散し、隣の自宅に降り注ぎ、自動車を損傷させた事件がありました。裁判所は、周囲の建物のガラスが割れていないことや、その台風が従来の台風と質的に異なるとまではいえないことなどを理由に、不可抗力とは言えず、損害賠償責任があると判断しました(東京地裁平成25年5月24日判決)。

 

3 不可抗力と判断された例

過去にあまり例が無いほどの大きな台風や地震であるときは、不可抗力であって、責任は無いと判断されます。伊勢湾台風(昭和34年)のときに過去にない高潮が発生し、堤防が決壊して人が亡くなりましが、このときは不可抗力であると判断されました(名古屋地裁昭和37年10月12日判決)。

昨年の台風21号の最大瞬間風速は、大阪市内で半世紀ぶりということでした。また、今年の台風15号は千葉県で観測史上1位となる最大瞬間風速であったということです。このような超強力な台風や、あるいは震度6を超えるような大地震のときは、不可抗力と判断されることが多くなると考えられます。

ただ、そのような大規模な台風のときでも、その建物や塀がもともと弱く、超強力な風速でなくても壊れたと認められるときは、通常有すべき安全性が無かったとして責任が認められます。

 

4 まとめ

法律の定める基本は上記のとおりですが、隣同士の場合などは、法的な判断を踏まえたうえで、「お互いさま」として話し合いができるといいですね。ケースによっては見舞金などの解決が適切な場合もあると思います。なお、数は少ないのですが、割合的な判断をした例もあります。飛騨川バス転落事故のときに、裁判所は、国道(工作物)の瑕疵による割合を6割、土石流(自然災害、不可抗力)を4割として、国に6割の賠償を認めました(名古屋地裁昭和48年3月30日判決)。技巧的な判断の側面がありますが、1つの解決かもしれないと思います。


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