消費者契約法が改正されました
2016年6月3日、消費者契約法の改正法が国会で成立しましたので、主な改正点をご紹介いたします(施行は1年後の2017年6月3日からの予定です)。
1 「事実と異なることを告げられて契約した場合」の取消の拡張
消費者契約法は、契約の対象となる商品やサービスに関し、「重要事項」について事業者が事実と異なることを告げ、そのために消費者が「誤認」して契約をしてしまった場合は、消費者は契約を取り消すことができると定めています。
改正法では、この「重要事項」の範囲が、契約対象の商品やサービスそのものに関する事項に限らず、消費者にとってその契約を必要とする事情にまで広げられました。
これまでは、例えば、家の床下に白アリがいるという虚偽の事実を告げられてリフォーム工事をしてしまったという場合、リフォーム工事の内容そのものについて虚偽が告げられたわけではないため、取消はできないとされてきました。今回の改正により、そのような場合も取消ができるようになりました。
2 「過量販売」の規制
認知症で判断能力が低下した高齢者などに対し、そのことにつけ込んで、必要もないのに同じ商品を何度も買わせるといった悪質商法による被害が問題となっています。
改正法では、そのような場合を想定して、事業者が、契約相手の消費者にとっての「通常の分量を著しく超えること」を知りながら商品等を販売した場合には、消費者はその契約を取り消すことができることになりました。
3 「取消権の行使期間」が半年から1年に
消費者契約法の規定による取消権は、これまでは、契約を取り消すかどうかの判断ができる状態になってから半年以内に行使しなければならないとされていました。
改正法では、その期間が半年から1年に伸ばされました。
4 「解除権を放棄させる条項」は無効
消費者契約法には、消費者にとって一方的に不利益な内容の契約条項を無効にする規定があります。消費者が損害を被っても事業者は一切責任を負わないとする条項や、必要以上に多額のキャンセル料を消費者に課すような条項は、消費者契約法で無効になります。
改正法では、それらに加えて、さらに、事業者に落ち度があっても消費者は契約を解除できないとするような条項は無効とされることになりました。
5 多くの課題が今後の検討に
今回の消費者契約法の改正に向けた審議においては、ご紹介した改正事項以外に、検討されたものの改正に至らず、今後さらに検討を要するとして積み残しになった課題が数多くあります。例を挙げると、認知症などで「合理的な判断ができない状況」にある消費者との契約についての規制のあり方が議論されましたが、規制の仕方によっては、消費者が認知症であるかどうかなどのプライバシー情報を事業者側が広く取得せざるを得ないことになり、そのことは消費者側にとっても不利益をもたらしかねないといった意見などが出て、抜本的な改正には至りませんでした。妥協の産物のようなものとして、前記2の「過量販売」の規制が導入されましたが、この規制では、例えば、認知症高齢者が不動産を相場とかけ離れた価格で取引させられたような場合には対応できません。
改正が先送りにされた課題について、今後の議論の行方が注目されます。