西天満総合法律事務所NISITENMA SŌGŌ LAW OFFICE

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内縁の妻(夫)も遺族年金を請求できます

1 内縁の妻(夫)も遺族年金を受けとることができます

    遺族年金は、「被保険者によって生計を維持していた遺族」が受けとることができます。年金は遺族の生活の安定が損なわれないようにする制度ですので、法律(厚生年金保険法)は、婚姻届を出していない「内縁の妻(あるいは夫)」でも遺族年金を受けとることができると定めています。(以下では内縁の妻について説明しますが内縁の夫の場合も同じです。)

2 戸籍上の妻と内縁の妻がある場合

    戸籍上の妻と内縁の妻の両方があるときは、どちらが配偶者として年金を受けとることができるのでしょうか。法律は、婚姻制度の保護と遺族の生活の保護の両方を考えて、「戸籍上の婚姻関係が形骸化していて、事実上離婚状態にあったときは、内縁の妻が年金を受けとることができる」としています。婚姻関係が形骸化しているどうかは、別居期間、反復した音信・訪問の有無、経済的な依存関係の有無、婚姻関係を修復する努力の有無などを見ることになります。

3 行政と裁判で基準が少し違います

    行政(日本年金機構)は、別居期間はおおむね10年以上とする基準を設け、それより短い期間では破綻していないと判断することが多いようです。しかし、裁判では、別居期間が6年10か月のケースでも婚姻関係は破綻していたとして内縁の妻の権利を認めています(大阪地裁平成27年10月2日判決)。
    また、生活費が戸籍上の妻に支払われていたときは、行政は婚姻関係は形骸化していないと判断することが多いのですが、裁判所は、お金の支払いがあっても婚姻関係の実体が失われているときは内縁の妻を配偶者と認めています(大阪高裁平成26年11月27日判決等)。
    このように、行政で認められなくても、裁判をすれば内縁の妻が配偶者として年金をもらえる可能性があります。

4 事務所で扱ったケース

    私が扱った事例をご紹介します。夫婦として約10年暮らしていた内縁の妻は、年金事務所から配偶者と認めてもらえず、困っておられました。夫は同族会社の社長で、役員であった戸籍上の妻と会社で会ったり仕事の連絡をしたりすることがありました。年金事務所は婚姻関係は形骸化していたと言えないとして、内縁の妻を配偶者と認めませんでした。しかし、仕事上の連絡を夫婦としての交流と捉えるべきではありませんので、審査会に不服申立を行いました。その結果、内縁の妻は配偶者と認められ、月額約17万円の年金を受けとることができるようになりました。
    当事務所では、他にも年金請求の裁判を行っています。行政で認められなくても不服申立や裁判で認められるケースもあります。遺族年金の問題でお困りのときはご相談ください。