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「同一労働同一賃金」に向けた法改正が行われました

 

 1 非正規労働者の増加

 パートタイム従業員や有期契約社員、派遣社員等、契約の形態や待遇面が正社員と異なる非正規労働者の数は、1990年代半ば以降、年々増え続け、ここ数年、その割合は4割近くになってています。

 非正規労働者は、正社員と同じ内容の仕事をしているにもかかわらず、賃金等の待遇面において、正社員より低い取扱いを受ける場合が多く、いわゆる「同一労働同一賃金」の原則を非正規労働者にも当てはめるべきだとの議論が起こっていました。

 

2 労働契約法20条に関する最高裁判決

  1. 労働契約法20条は、非正規労働者のうち、期間を決めて雇用される従業員(有期契約社員)の労働条件について、 正社員の条件と比べて不合理なものであってはならないと定めています。

    この労働契約法20条に関して、有期契約社員が原告となり、正社員に支払われる各種手当が自分に支払われないのは違法だとして、 損害賠償等を請求していた異なる2つの事件で、平成30年6月1日、最高裁の判決がありましたので、ご紹介します。
    1. ハマキョウレックス事件
      業務内容は同じで、配転の有無についてのみ正社員と異なる有期契約社員が原告となった 事件です。
      最高裁は、住宅手当については、配転が予定されていないことを理由に、有期契約社員に対して支払われなくても 不合理とはいえないとしましたが、その他、通勤手当、無事故手当、作業手当、給食手当、皆勤手当における相違は不合理と 認められるとし、原告側の請求を認めました。
    2. 長澤運輸事件
      業務内容や配転の範囲が正社員と同じで、定年後に再雇用された有期契約の嘱託社員が原告となった事件です。
      最高裁は、能率給や職務給が支給されない点については、定年前の基本給より定年後の基本給の方が高いこと、正社員の能率給よりも2,3倍近い係数で歩合給を支払っていること、団体交渉の結果、嘱託社員の基本給が引き上げられたこと、年金の支給を受けることも予定されていること等から、不合理とはいえないと判断しました。他方、精勤手当については、嘱託社員と正社員と職務の内容が同一である以上、その皆勤を奨励する必要性に違いはないから、不合理であるとしました。

 

3「同一労働同一賃金」に向けた法改正

 昨年6月に成立した「働き方改革関連法」により、労働契約法20条は削除され、改正された「パートタイム・有期雇用労働法」で、パートタイム労働者、有期契約労働者及び派遣労働者の3類型の非正規労働者への待遇差に関する定めが設けられることになりました(施行時期は、大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月)。

 改正法では、不合理な待遇差が禁止される(均衡待遇)だけでなく、仕事の内容と責任の程度や配置の変更の範囲が同じである場合は、待遇差を設けることが禁止されます(均等待遇)。

 また、非正規労働者は、正社員との待遇差の内容や理由について、事業主に説明を求めることができるようになります。事業主は、非正規労働者から求めがあった場合は説明をしなければなりません。

 改正法の施行に向け、政府は、「同一労働同一賃金ガイドライン」を策定し、平成30年12月28日に告示しました。ここには、どのような待遇差が不合理とされ、また、不合理とされないかについて、考え方と具体例が示されています。ガイドラインは、厚生労働省のホームページに掲載されています。適用される時期は、改正法の施行時期と同じです。

 ガイドラインを参考に、非正規労働者の待遇を見直すことが企業に求められます。