西天満総合法律事務所NISITENMA SŌGŌ LAW OFFICE

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弁護士会の活動と担当分野での新しい法律・判例のご紹介

弁護士 高江俊名

今年の4月から、大阪弁護士会の副会長を務めています。今回は、弁護士会がどのような活動をしているのかをご紹介し、副会長として担当している分野での新しい法律と裁判例のことについても触れたいと思います。

1.弁護士会の活動

⑴弁護士自治

弁護士や弁護士会の活動に関しては、弁護士法という法律があります。弁護士法は、その第1条で、弁護士の使命について、次のように定めています。

  1. 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
  2. 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。

そして、弁護士会の目的について、「弁護士会は、弁護士の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士の事務の改善進歩を図るため、弁護士の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。」と定めています(弁護士法31条)。

この規定に基づいて、弁護士の登録や弁護士に対する指導監督、懲戒処分などは、弁護士会が行っています。これは、弁護士が、その使命である人権擁護と社会正義を実現するためには、いかなる権力にも屈することなく、自由独立でなければならないとの考えによるもので、「弁護士自治」と呼ばれています。

⑵基本的人権の擁護、法律制度の改善の提言

弁護士会は、弁護士の使命とされている基本的人権の擁護や法律制度の改善のために、人権救済の申立てを受けて人権侵害事例について警告や勧告を行ったり、弁護士会の中に様々な分野の委員会を設けて法律制度の改善について検討し、提言を行ったりしています。

⑶その他

そのほかにも、弁護士会は、法律相談や弁護士紹介、弁護士の業務を広げるための取組など、様々な活動を行っています。大阪弁護士会には、7人の副会長がいて、弁護士会が行っている様々な活動について、分担しながら職務を行っています。

2.LGBTに関する新しい法律と最高裁判例

⑴LGBT理解増進法

私が副会長として担当している分野で最近成立した新しい法律として、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(通称LGBT理解増進法)があります。2023年6月16日に国会で成立しました。

この法律が成立する経緯には紆余曲折がありましたが、重要なポイントは、基本理念として、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策は、全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならないものであるとの認識の下に、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを旨として行われなければならない」(第3条)と定められていることです。

「性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される」「性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならない」とされたところがポイントになります。

⑵トランスジェンダーのトイレ利用制限を違法とした最高裁判例

LGBTの人権に関しては、2023年7月11日に、経済産業省で勤務するトランスジェンダーの女性が女性用トイレの使用を制限されていたことの違法性が争われていた訴訟で、最高裁判所が、制限を違法とする判決を言い渡しました。

この最高裁判決は、各裁判官がそれぞれ補足意見を述べており、異例であるとして報道でも話題になりました。その補足意見では、以下のようなことが述べられています。

「自認する性別に即して社会生活を送ることは、誰にとっても重要な利益であり、取り分けトランスジェンダーである者にとっては、切実な利益である、そして、このような利益は法的に保護されるべきものと捉えられる」

「性別は、社会生活や人間関係における個人の属性として、個人の人格的な生存と密接かつ不可分であり、個人がその真に自認する性別に即した社会生活を送ることができることは重要な法益として十分に尊重されるべきものである」

「同僚の女性職員が同じ女性トイレを使用することに対して抱く可能性があり得る違和感・羞恥心等は、トランスジェンダーに対する理解が必ずしも十分でないことによるところが少なくないと思われるので、研修により、相当程度払拭できると考えられる。」

この最高裁判決は、職場におけるトランスジェンダーのトイレ使用が問題になったケースについてのものですが、自認する性別に即して社会生活を送ることは重要な法益として保障されるべきものであることを明らかにするとともに、社会全体でトランスジェンダーに対する理解を広げていくことの必要性を示唆しているものと考えられます。