西天満総合法律事務所NISITENMA SŌGŌ LAW OFFICE

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「空き家」を所有するときの法的問題

弁護士 松森 彬

1 空き家にしている理由

全国で空き家が増えています。総務省の2023年10月の調査によると、長期にわたって使われていない空き家が385万戸もあり、20年間で1.8倍に増えました。

空き家の半数は、親から相続した住宅です。空き家にしている理由は、

  1. セカンドハウスとして使うという場合もありますが、多いのは、
  2. 家財などが残っている(整理ができていない)、
  3. 相続について意見が分かれている、
  4. 売れない(あまり価値がない、借家人がいる)、
  5. 貸せない(リフォーム費用がかかる)、
  6. 建物を壊すのに解体費用がかかる、
  7. 更地にすると敷地の固定資産税が高くなる

などです。

しかし、空き家のままで放置しますと建物は傷んできます。老朽化しますと次のような問題が出てきます。

2 空き家法の「管理不全空家」、「特定空家」に認定される可能性

空き家は放置されますと、外壁が落ちたり屋根が飛んだりして近隣に迷惑をかけます。また、ねずみや害虫の発生、ゴミの散乱、火災のおそれなど、衛生上や景観上の問題、治安の悪化などを招きます。

そこで、国は、2014年(平成16年)に「空家対策特別措置法」(空家法)を制定し、倒壊などの危険がある空き家を「特定(とくてい)空家(あきや)」に認定し、市区町村による指導や勧告ができることにしました。

しかし、倒壊のおそれがある特定空家の段階になってからの対応には限界がありますので、空家法を2023年(令和5年)に改正して、窓や壁が破損していて管理が不十分な空き家を「管理(かんり)不全(ふぜん)空家(あきや)」と認定して、行政が指導、改善を促すことができるようにしました。

市区町村から管理不全空家に認定されて勧告を受けますと、特定空家と同様に、敷地について固定資産税の軽減措置の適用がなくなり、固定資産税が高くなります。

3 外壁や屋根が落ちるなどして被害を与えると損害賠償責任

外壁のタイルや屋根材が剥落したりして、隣の建物や通行人などに被害を与えますと、空き家の所有者は、土地工作物責任(民法717条)や不法行為責任(民法709条)により損害賠償をしなければなりません。そこで、そのような危険性があるときは、少なくとも応急工事だけはしておく必要があります。

4 主な問題

(1)売るとき

敷地が借地である場合は、地主の同意が必要です。ただ、地主が承諾しなくても、建物の買い手が見つかるときは、裁判所に借地非訟の手続を申し立てて、裁判所の許可を得て建物を売却することができます。

(2)貸すとき

建物が使えるときは、リフォームして貸すのも一つの方法です。期間を決めた定期借家契約にしますと、一定期間後に返してもらうことができます。

(3)建物を取り壊すとき

神戸市の調査によりますと、木造家屋の解体費用の平均は170万円であったようです。アスベストがあるときは別途除去費用がかかります。

ただ、更地にしますと敷地の固定資産税が高くなります。方針を決めてから解体することが必要です。

5 できれば3年を目処に方針を

次のようなこともありますので、相続から3年以内を目処に方針をお決めになるのがよいと思います。すなわち、令和6年4月から相続登記は義務化され、相続から3年以内に相続の登記をしなければならないことになりました。また、一定の条件を充たすときは譲渡所得から3000万円までが控除される特例措置がありますが、それも相続開始から3年を経過した年の12月末までです。

6 地方自治体の相談窓口の利用

空き家の処分についてはわからないことが多いと思います。市区町村は相談窓口を設けていますので、一度、空き家がある市区町村にご相談いただくのがよいと思います。大阪市の窓口は、大阪市立住まい情報センター(電話06-6882-7053)です。