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AI新法について

弁護士 柳本千恵

1.AI新法が施行されました

近年、AI(Artificial Intelligence=人工知能)の進化により、生活やビジネスの在り方が大きく変わろうとしています。

AI技術により、業務の効率化や人手不足の解消、ヒューマンエラーの削減等が可能になる一方、誤情報の生成や倫理的な問題等のリスクが指摘されています。

EUでは、2024年5月にAI規制法が成立し、リスクの程度に応じた規制や制裁金が定められました。日本では、2023年5月から政府主導でAI戦略会議が開催され、2025年9月1日、「人口知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI新法)が施行されました。

AI新法は、他国に遅れをとる日本のAI技術の開発・活用を促進しつつ、AIによるリスクに対応するため、既存の刑法や個別法に加え、新たな法律が必要となったことから、制定されました。

以下では、AI新法についてご説明します。

2.AI新法の概要

⑴基本理念

AI新法には、

  1. AI関連技術が経済社会及び安全保障上重要であることに鑑み、日本におけるAI関連技術の研究開発力を保持し、国際競争力を向上させること、
  2. AI関連技術の基礎研究から活用までの各段階の関係者による取組を総合的・計画的に推進すること、
  3. AI関連技術の研究開発及び活用が不正な目的・不適切な方法で行われた場合には国民生活の平穏・国民の権利利益が害される事態を助長するおそれがあることに鑑み、AI関連技術の適正な研究開発・活用のための透明性の確保等の施策が講じられなければならないこと
  4. 日本がAI関連技術の研究開発及び活用における国際協力における主導的役割を果たすように努めること

の4つの基本理念が規定されています。

⑵国等の責務

AI新法では、以下のとおり、国、地方公共団体、研究開発機関、事業者及び国民に対する責務が定められています。

  • 国の責務...AI関連技術の推進に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、実施すること。
  • 地方公共団体の責務...地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、実施すること。
  • 研究開発機関の責務...AI関連技術の研究開発及びその成果の普及並びに人材の育成に積極的に努めるとともに、国及び地方公共団体が実施する施策に協力するように努めること。
  • 事業者の責務...AI関連技術の活用により事業活動の効率化及び高度化並びに新産業の創出に努めるとともに施策に協力すること。
  • 国民の責務...AI関連技術に対する理解と関心を深めるとともに施策に協力するよう努めること。

⑶法制上の措置等

国は、AI関連技術に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとすると定められています。

⑷ 基本的施策

国は、AI関連技術の研究開発及び活用について、

  1. 研究開発の推進、体制整備、情報提供等の施策
  2. 施設及び設備等の整備及び共用の促進
  3. 適正性の確保
  4. 人材の確保等
  5. 教育の振興等
  6. 調査研究等
  7. 国際協力

の7 つの基本的施策を講ずるものとすると定められています。

⑸ 人工知能基本計画

政府は、AI新法の基本理念にのっとって、AI関連技術の研究開発及び活用の推進に関する基本的な計画(人工知能基本計画)を定めるものとするとされています。

⑹ 人工知能戦略本部

人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、人工知能戦略本部を置くこととされています。

3.付帯決議

AI新法の制定にあわせて、新法施行にあたって政府が留意すべき事項を定めた付帯決議が衆参両院で可決されました。

付帯決議では、AI関連技術を悪用して子ども等のわいせつな画像や動画を作り出す、いわゆる「性的ディープフェイク」への対策や、国の指導や助言に応じない事業者に対する措置の在り方を検討すること等が政府に求められています。

AIが今後の我々の生活にもたらす利点が計り知れないものである一方で、AIに潜在するリスクもまた未知的であり、AI新法を基にさらなる規制が必要です。