西天満総合法律事務所NISITENMA SŌGŌ LAW OFFICE

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1月から「下請法」は「取適法(とりてきほう)」に

弁護士 松森 彬

「下請法」(下請代金支払遅延等防止法の通称)は、2025年5月に全面的に改正され、法律の名前が「中小受託取引適正化法」(通称:取適法)(とりてきほう)に変わりました。今年1月から施行されています。

1 これまでの「下請法」

⑴下請法とは

下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、下請取引における不公正な取引を防止し、下請事業者の利益を保護する法律です。独占禁止法を補完する法律として、昭和31年に制定されました。

下請法は、親事業者に対して、発注する内容を書面などで明示する義務や取引の記録を保存する義務など4つの義務を定めています。

また、下請法は、親事業者が正当な理由なく次の10の行為を行うことを禁止しています。

  1. 発注品の受領拒否
  2. 代金支払の遅延
  3. 発注後の代金の減額
  4. 返品
  5. 著しく低い代金での買いたたき
  6. 他の製品の購入・利用などの強制
  7. 不当な取引を通報したことを理由とする報復措置
  8. 支給する原材料等の対価の早期決済
  9. 協賛金や従業員派遣などを不当に提供させる行為
  10. 発注の取消しや内容の変更、無償でやり直しや追加作業などをさせる行為

この度の改正で、「協議に応じない一方的な代金決定」(次の2項(1)の行為)が追加され、禁止行為は合計11になりました。

⑵多数の勧告や指導

下請法違反の行為がありますと、公正取引委員会が勧告や是正の指導をします。2024年は21件の勧告と8000件を超える指導が行われました。

2 改正の6つのポイント

取適法(中小受託取引適正化法)は、下請法の規制内容を追加し、規制対象を拡大しました。
改正の6つのポイントをご説明します。

⑴「協議に応じない一方的な代金決定」の禁止

近年、労務費、原材料費、エネルギーコスト等が上昇していますが、それが下請代金に十分反映されないという問題が生じています。そこで、取適法は、価格協議を義務化しました。

下請事業者(新法では中小受託事業者といいます)から「代金を値上げしたい」などの協議の求めがあったときに、親事業者(新法では委託事業者といいます)が協議をせず、あるいは必要な説明をせず、一方的に代金を決定するという行為は禁止されます。

今後、委託事業者は中小受託事業者と価格について適切に協議を行い、交渉の記録を保管しておくことが求められます。

⑵手形払などの禁止

手形や電子記録債権などによる支払いが禁止になりました。手形払いは、手形の交付日から満期日まで現金受領を待つ必要がありました。それがなくなり、受託側は早くに現金を得られることになりました。

⑶従業員基準の規模要件への追加(下請法逃れなどへの対応)

下請法は、資本金が一定額以上の大きな会社が、資本金が一定額以下の小さな下請会社と取引をする場合を対象にしていました。しかし、資本金が少額でも実態は大企業という場合があります。また、下請法の規制を逃れようとして資本金を減資するという例もありました。

そこで、新たに従業員数による規制が追加されました。たとえば、製造を委託する取引の場合は、委託側が従業員300人超、受託側が300人以下ですと、資本金による基準を満たしていなくても、規制の対象となります。

⑷運送委託の対象取引への追加(物流問題への対応)

荷主が運送事業者に運送を委託する取引は、これまでは下請法の対象外でした。運送業者間の再委託のみが対象でした。しかし、運送事業者は荷主に対して立場が弱く、無償で荷積み・荷下ろしや長時間の待機などを強要される問題がありました。

この問題の適正化をはかるため、荷主が運送事業者に運送を委託する取引も新たに規制の対象となりました。

⑸事業所管省庁にも指導、助言の権限

指導・助言は、これまでは公正取引委員会がしていましたが、事業を所管する各省庁も指導や助言ができるようになりました。

⑹法律の名称、用語の見直し

法律の名称が変わり、「親」、「下請」などの上下関係をイメージさせる用語も一新されました。「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」になりました。