事務所ニュース [2017年6月号]

成年後見制度利用促進法について

1 少なすぎる利用状況

 2016年4月、「成年後見制度の利用の促進に関する法律」(以下、成年後見制度利用促進法といいます。)が成立し、同年5月13日から施行されています。
 成年後見制度は、認知症などにより金銭管理や契約が難しくなった人のために家庭裁判所が後見人を選任し、後見人がご本人の金銭管理や契約行為のお手伝いをしながらご本人の生活を支援していく制度です。
 現在の成年後見制度は2000年から施行されており、施行以来、制度の利用者は年々増えてきましたが、制度の新規利用件数は年間約3万5千件程度で、ここ数年は、新規利用件数の伸びは横ばいの状態になっています。この利用状況は、現在の日本の社会における認知症者の数が300万人程度とされていることからすると、少なすぎるのではないか、ということが言われてきました。
 成年後見制度利用促進法は、そのような状況を踏まえ、認知症などになっても安心して暮らせる社会にしていくべく、成年後見制度の利用を促進する施策を国が総合的・計画的に実施していくために制定されました。法律が成立した後、内閣府のもとに設置された有識者委員会で利用促進のための施策が議論され、委員会がとりまとめた意見をもとに、2017年3月、成年後見制度利用促進基本計画が閣議決定されています。

2 利用促進のために必要なことは?

 基本計画では、制度を利用しやすくするために、単に広報を強化するといったことだけでなく、制度の運用のあり方も見直すものとされています。
 現在、制度の利用を阻んでいると思われる大きな要因の一つとして、現在の制度運用では、制度を利用した本人が「何もわからない人」と決めつけられてしまうような状況になっていることがあります。
  成年後見制度では、本人の判断能力の状態に応じて「補助」「保佐」「後見」の3類型が設けられています。このうち「後見」の類型は、本人が「判断能力を常に欠く状態にある」と判定された場合に適用されるのですが、現在の制度運用では、この「後見」の類型が適用されるケースが約8割を占めています。「後見」の類型では、本人は「判断能力を常に欠く状態にある」とされるため、本人の財産管理について後見人に全面的な権限が与えられます。そして、後見人は、往々にして、本人は「何もわからない」と思い込んでしまい、本人のことを決めるにもかかわらず、本人の意向を確認せずに職務を行いがちになります。本人から見れば、後見制度を利用すると「何もわからない」とされ、自分のことが知らないところで勝手に決められてしまうので、後見制度は「使いたくない制度」でしかありません。また、後見人が、本人の財産管理のために大きな権限が与えられているのを悪用し、本人の財産を使い込むといったケースが多発するようになったことから、裁判所は、後見人による権限の悪用を防ぐために、後見人の財産管理状況を厳しく監督せざるをえなくなってきました。その結果、後見制度は、後見人になる親族の人たちにとっても「使いたくない制度」になってしまっているのです。
 認知症の人が増えている中で、後見制度の利用について弁護士として相談を受ける機会は多く、今後も制度の利用を検討する人は増えていくものと思います。
 利用の促進のためには、成年後見制度利用促進法に基づく今後の制度運用の見直しの中で、「後見」類型の適用が約8割を占めている現状を改め、「後見」類型のように後見人に全面的に権限が付与されるのではなく、本人が支援を必要とする部分に限定して権限が付与される「補助」類型を中心とした運用に転換していく必要があります。


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