事務所ニュース [2020年12月号]

事業承継のポイント

弁護士 松森 彬

1 事業承継の重要性

事業の承継は経営者にとって大きなテーマです。当事務所も事業譲渡の契約締結やトラブルの法的解決の仕事を扱っています。

中小企業の経営者が引退されるときの平均年齢は、中規模事業者の場合が67.7歳で、小規模事業者の場合は70.5歳です(中小企業庁の2012年の調査)。既に子への承継が決まっておられる経営者や、自分限りで廃業されるつもりの経営者もおられますが、約3割の経営者は、後継者が確保できないと言っておられます。理由は、子に引き継ぐ意思がない、あるいは、子がいない、適当な後継者が見つからないなどです。

 

2 誰に承継するか(3つの場合)

多いのは、子などの親族への承継(親族内承継)です。次は、会社の役員、従業員などへの承継(親族外承継)です。最近、増えているのが、第三者への承継(M&A)です。

どの方法を取るかによって準備や検討も変わってきます。そして、いずれの場合も、後継者の人選や育成には時間がかかります。

 

3 子などに承継する(親族内承継)

(1) 株式の生前贈与や遺言書の作成

子などの親族に承継する場合は、①自社株を生前に後継者に「贈与」しておく、あるいは、②後継者に自社株を遺贈することを「遺言書」に書いておくなどの準備が望まれます。

遺言書を書く場合ですが、推定相続人の全員の合意をとることができれば、後継者の子に生前に贈与した株式については遺留分算定の基礎から外すこともできます(経営承継円滑化法)。

(2) 相続税、贈与税などの納税猶予

子に生前に株式を贈与しますと贈与税が発生します。そこで、年間110万円までの非課税枠を活用して計画的に自社株を後継者に贈与することが考えられます。また、事業承継の場合の贈与税や相続税は、納税猶予や免除の制度がありますので、その利用も適切です。

(3) 名義株を解決しておく

会社を設立したときに名義を借りただけの名義株があります。そのようなときは、名義株主が後で権利を主張しないように、関係を明確にしておくことが適切です。

(4) 様々な対策

後継者による経営が安定化するように、ケースによっては次のような対策も行われます。

  1. 後継者が、後で他の相続人に対して株式の売り渡し請求ができるように、定款を変更しておく。
  2. 後継者に経営権を集中させるため、議決権の無い株式を発行し、後継者には普通株式を相続させ、他の親族には配当優先の議決権の無い株式を相続させる。
  3. 相続後の後継者の株式だけでは経営に不安があるときは、一定の株式を、役員、従業員持株会、金融機関等の安定株主に持ってもらう。
  4. 後継者が持株会社を設立し、経営者は自社株を持株会社に売却する方法もある。経営者には株式の譲渡代金が残り、相続財産は現金になるので、株式の分散を防止できる。

 

4 役員、従業員などに承継する(親族外承継)

この場合は、株式の買い手の買取り資金の確保が課題になります。配偶者、子などの相続人の理解と協力が欠かせません。

 

5 第三者に承継する(M&Aなど)

(1) 社外の第三者への承継が増えている

親族内での後継者確保が難しくなって、第三者への承継(エムアンドエー)(M&A)が増えています。以前はマイナスイメージを持たれることもありましたが、近年は、M&Aによる事業の継続、譲り受け先の事業との融合による飛躍などのプラス面が注目されています。

(2) 株式譲渡の方式と事業譲渡の方式

株式を譲渡する方式は、自社株式を他の会社や個人に譲渡します。株主が変わるだけで、従業員や金融機関の借り入れなどはそのまま引き継がれます。わかりやすい方式です。また、事業を譲渡する方式もあります。会社あるいは個人の事業主が事業を他の会社や個人に譲渡します。この場合は、譲受人が簿外債務を引き継ぐリスクが少なくなります。

(3) 承継先(譲渡先)の選定

信頼できる承継先(譲渡先)を見つけることが一番重要です。通常は取引先や同業者などが候補として考えられます。承継先の紹介や仲介を業としている民間会社もありますが、信頼度や報酬等はいろいろです。利用されるときは弁護士や税理士に相談されるのがよいと思います。

以上


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