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養育費等の算定表が新しくなりました

 

1.裁判所が設けている「養育費等の算定表」が新しくなりました

(1) これから養育費等の取り決めをする場合

離婚の際、養育費や婚姻費用(以下では「養育費等」といいます)の額がしばしば問題になります。養育費等は、子や配偶者の日々の生活に不可欠な費用であり、簡易迅速に算定される必要性が高いことから、平成15年に、裁判官らによって養育費等の算定表(旧算定表)が提案されました。算定表は、夫婦の収入や子の人数を当てはめれば、容易に養育費等を算定できるようになっています。

それ以降、旧算定表を用いて、養育費の算定が行われてきましたが、この間、税制・保険料率の変更や、家庭の生活様式の変化(例えば、子どもの携帯電話の普及や教育費の変化等)があり、旧算定表による算定が現在の社会実態に合わないものになっているとの意見が出ていました。

そこで、最高裁判所は、令和元年12月、現在の社会情勢を反映させた新しい算定表(新算定表)を公表しました。

例えば、夫の年収450万円、妻の年収150万円、妻が15歳未満の子1人と同居する場合、旧算定表では2万円から4万円程度であった養育費が、新算定表では4万円から6万円程度に増額になっています。

(2) 既に養育費等の取り決めがある場合

既に取り決めがされている場合の養育費等の額は変更されません。額の変更を希望する場合には、改めて、調停等で養育費等の額を取り決める必要があります。

 

2.養育費の支払いを確保するために

(1) 養育費の取り決めがされたものの、多くの人が養育費の支払いを受けられていない状況にあることが問題になっています。

平成28年度に厚労省が行った調査では、養育費の取り決めをした母子世帯のうち、「現在も養育費の支払いを受けている」と回答した世帯は、53%にとどまります。

(2) 公正証書や裁判所の調停などで養育費の取り決めを行った場合、この取り決めをもとに、支払義務者(以下「義務者」といいます)の預金口座や給与の差押えをすることができます。

差押えをするためには、義務者の預金口座や勤務先等の情報が必要です。義務者の預金口座が分からない場合、弁護士に依頼すれば、弁護士会を通じて、銀行に対し、義務者の預金口座の有無等を照会することができます。

(3) 最近の民事執行法の改正により(令和2年4月1日施行)、財産開示手続における制裁が強化されました。義務者に対して財産開示手続を行い、義務者が自分の財産を開示しなかった場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

また、市町村や厚生年金の実施機関等に対して義務者の勤務先を問い合わせたり、銀行の本店に対して義務者の口座がある支店名を尋ねたりすることができるようになりました。これらの手続を利用して、義務者の給与や預金などの財産情報を知ることが可能になります。

差押え以外にも、一定の期間内に養育費等を支払わなければ、養育費に上乗せして、期間に応じた「間接強制金」を支払わせる命令を裁判所に求めることもできます。義務者に心理的圧迫を加え、支払いを間接的に強制します。

 

3.養育費の支払いと面会交流

(1) 調査によりますと、養育費の受取率は、面会交流の頻度が「月1回以上」では36.0%、「年に数回」では30.3%、「ほとんどない」では14.3%、「全くない」では10.4%です。養育費の受取率と面会交流の頻度は正の比例関係にあることが分かります(労働政策研究・研修機構の2018年の調査)。

(2) 面会交流には、子どもと直接会って交流する「直接交流」と、写真や電話等によって交流する「間接交流」があります。東京高裁の令和元年8月23日の決定は、子が父(非監護親)との面会を拒否する意思を有していたため、直接交流は認めませんでしたが、母(監護親)から父に対して、子の電子メールアドレスとLINEのIDを通知して、父子で連絡を取り合う間接交流を認める判断をしました。

子どもが遠方に住んでいる場合や、子どもが面会交流に拒否感を示す場合に、このような間接交流が用いられることがあります。間接交流は、感染症の影響で遠方との行き来が難しい現在の状況下においても有効な面会交流の手段であると思われます。

以上