事務所ニュース [2021年初夏号]

トラックの火災事故で製造物責任が認められました

弁護士 松森 彬

1 トラックと積荷が全焼

 大阪の運送会社の大型トラックが、広島県内の山陽自動車道を走っていたところ、突然、エンジンから出火し、車両と航空貨物の積荷(約1億円)が全焼しました。運送会社は、メーカー(いすゞ自動車)に調査を求めましたが、メーカーは、運送会社のオイル・メンテナンスの不備の可能性があると主張しました。運送会社は、納得がいかないとして裁判を起こしました。

 私たちは、事故直後から相談を受け、会社の皆さんや、整備士や技術士と一緒に検討しました。別のメーカーのトレーラーのタイヤが外れて歩行者に当り、死亡事故を起こした実話を元に、作家の池井戸潤さんが書かれた「空飛ぶタイヤ」という小説があります。この裁判でも、原因をめぐって双方の言い分は真っ向から対立しました。ボルトの製造会社に行って資料をもらい、又、図書館に行って技術書も読みました。運送会社はオイルの点検整備をした記録を残しており、点検整備の不備が無いことは証明できましたが、原因については、エンジンが壊れていることもあり、細部の点で分からないところもありました。

 大阪地裁は、2019年3月の判決で、メーカーが十分な資料を出さなかったことや、裁判官が取扱説明書を読みまちがったことがあり、請求を認めませんでした。

 運送会社は高裁に控訴し、私たちは、メーカーが説明しなかった点も積極的に調べ、証拠を追加しました。その結果、大阪高裁は、今年4月28日、地裁の判決を変更し、メーカーに損害の賠償を命じ、運送会社にとって全面勝訴の判決を出しました。

 トラックの火災事故で製造物責任が認められた初めての判決だと思います。毎日新聞で報道されましたのでご覧いただいた方もあるかもしれません。メーカーは上告(上告受理申立)をしましたが、最高裁は原則として法律解釈の問題しか扱いませんので、高裁判決が確定すると思います。

 

2 製造物責任法で欠陥が認められる場合

  1. 「製造物責任法」(PL法)は、製品事故があったときに被害者の救済をはかるためにできた法律です。この法律ができるまでは被害者が専門的な原因や因果関係の全部を証明する必要がありましたが、それでは製品事故の被害救済はできませんので、外国で製造物責任法が作られ、日本でも26年前(1995年)にできました。

    ただ、法律の欠陥についての規定が抽象的で、数百件の訴訟のなかで欠陥が認められたケースは、2~3割だと思います。特に、自動車の場合は、リコール制度があって不具合の部品の取り換えが行われることや、トラックの場合はエンジンの無償交換などで示談が行われ、裁判になることは少なかったといえます。
  2. この10年程の間に、十数件の判決が欠陥を判断する枠組を示しました。それは、製品事故の被害者が、「通常の用法で使用していたにもかかわらず(点検整備が必要なときは点検整備も適切に実施していたことの立証も必要)、製品が破損、出火などの事故を起こしたことを証明したときは、それ以上に製品の欠陥の内容や事故に至った原因・機序までを主張立証しなくとも、欠陥があると推定される」というものです。メーカーは、製品内に欠陥はないことを反対に証明する必要があります。この判断の仕方で、工場の乾燥装置、大型シュレッダー、自動販売機、ヘリコプター、乗用車、自転車、足場台、エアコン、ふとん乾燥機、ノートパソコン、携帯電話などについて欠陥が認められました。
  3. 今回の大阪高裁の判決も、この判断枠組でよいとし、本件でメーカーの反証はできていないとして、トラックの火災事故で初めて製造物責任を認めました。

    これまで、メーカーは、よく調べずに被害者の使い方が原因だと言い、裁判では、立証責任は被害者にあるとして、メーカーの情報は出さず、被害者の主張にケチをつけるという姿勢が多かったようです。今回の大阪高裁の判決は、製品事故があったときは、メーカーは原因をきちんと調査し、誠実に対応する必要があることを示したと思います。

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