先日(12月5日)、大阪府が相談員のために設けている研修講座で、「民事裁判による権利救済の仕組み」について講義をしてきました。
民事訴訟法は、大学時代に学生が「眠素」と言っていましたが、理屈が多いテーマで、そのままでは眠くなります。この日は専門的な話しは少なくして、裁判を利用する場合に知っておいてほしいことに絞ってお話ししました。
講演を少し再現しますと、依頼者の方が法律事務所に来られても、最初から裁判提起の方針を立てることは少なく、とりあえずは法律相談が行われることを説明しました。相談料は事務所によって若干異なりますから、事前に聞いていただく必要がありますが、多くは30分5000円です。弁護士に依頼することなく、相談(助言)だけで終わることもしばしばあります。
弁護士が受任する場合も、すぐに裁判をするというのではなく、まずは弁護士から相手方に内容証明郵便を送って話し合い解決を求めることが普通です。話し合いで解決しないときに、裁判を起こすことになります。
裁判ではなく、簡裁あるいは家裁の調停を起こすこともあります。調停は裁判所における話し合いという性質のもので、証拠調べや判決はありません。調停でまとまらないときは、裁判を起こすことになります。
裁判が始まっても、4割位の事件は途中で和解(裁判所でまとまる示談のことです)で終わります。判決までのフルコースですと平均1年位かかりますが、途中で和解で終わることも多いわけです。
費用の説明もしました。裁判にかかる費用は、大きく、裁判所に納める手数料と、弁護士に支払う手数料(最初に払う着手金と終了時に払う報酬)に分かれます。お金が無い人は、法務省の外郭団体である「日本司法支援センター(法テラス)」に申請して弁護士費用などの立て替えをしてもらえる制度があります。収入が一定額以下(たとえば2人家族で月額27万円以下)の場合は、費用の立替が受けられる可能性があります。立て替えてもらった費用は、裁判終了後に分割で返すことになります。
医療は国民皆保険というすぐれた制度ができていますが、司法は遅れています。しかし、ヨーロッパでは弁護士費用保険が進んでいて、ドイツでは国民の半数が弁護士費用保険に入っているそうです。日本でも、現在、自動車保険に弁護士費用保険の特約が付くようになり、その利用が増えています。今後弁護士費用保険の拡大が望まれます。