「弁護士は民事裁判をどう見ているか」について大阪弁護士会でアンケート調査を行い、その結果を1月17日に発表しました。私は、調査検討チームの座長を務めました。
調査には大阪の弁護士の367人が回答を寄せました。全会員の約1割ですが、だいたいの弁護士の意見を示していると思います。主なものをご紹介します。
「今の裁判は両当事者の訴えを十分に聞いて行われていると思うか」という質問について、「十分」との答えは2割で、「時折不十分」の答えが7割ありました。
「判決の事実認定が明らかに誤っていると思うことがあるか」という問いについては、「ほとんど無い」は2割で、「時折ある」が7割でした。
証拠を集める制度について、「現行制度で十分」は1割しかなく、「不十分」が6割でした。また、現地を見に行く検証の実施が減っているのですが、「もっと検証を行うべき」が7割を占めました。
高等裁判所は件数が多く、最近は1回で結審することも増えていますが、1回だけの裁判で結論が逆転になることもあり、多数の不満が寄せられました。
裁判官の数については、「十分と思う」は1割で、「足りないと思う」が6割でした。
現在、裁判官は3年毎の転勤になっていますが、転勤がない国もあります。「裁判官の転勤による交代で裁判に支障があったと思うことがあるか」との問いについて、「時折ある」が6割、「よくある」が1割で、「ほとんどない」は3割でした。
「裁判官は記録をよく読んでいると思うか」については、「よく読んでいない裁判官が時折いる」が8割もあり、「よく読んでいると思う」は2割に留まりました。敗訴した側の主観的な意見が入っていることもあり得ますが、それにしても、否定的意見の多さが気になります。
代理人としての弁護士の仕事ぶりについても尋ねました。「相手方弁護士が時間や期限を守っているか」については、「問題を感じない」は2割に留まり、「時折問題だと思う」が7割あり、「問題だと思うことが多い」が1割ありました。
全体として、「今の民事裁判制度は国民にとって満足のいくものだと思うか」を尋ねました。「そう思う」は1割で、「そう思わない」が6割でした。
「今の民事裁判制度は国民にとって利用しやすいものと思うか」についても、「そう思う」は1割で、「そう思わない」が6割でした。
これら二つの質問は、学者が以前に行った当事者本人に対する調査でも行われました。二つの調査の結果はほぼ同じで、厳しい内容となりました。
裁判には勝ち負けがあり、敗訴した側は否定的意見になりがちですが、それを考慮しても、調査の結果は今の民事裁判に課題が多いことを示唆しています。また、今回の調査では、80件の具体的な事例も報告されました。
実務の改善、裁判制度の改革、裁判官の増員など、民事司法全体の抜本的な改革が必要であると思います。(弁護士 松森 彬)
(追記)
大阪弁護士会が行った弁護士アンケート調査の結果は、日弁連の「自由と正義」2013年8月号に掲載されています。松森彬「なぜ民事裁判の弁護士調査を行ったか」(33頁以下)と、米倉裕樹、木村卓朗、黒田愛、山本雄大、赫高規「弁護士は民事裁判をどう見ているか」(37頁以下)の二つの記事です。(弁護士松森 彬)(2024年2月12日追記)