西天満総合法律事務所NISITENMA SŌGŌ LAW OFFICE

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任官ガイドブックを発行しました

この度、近畿の弁護士会で構成されている近畿弁護士連合会で、弁護士向けの任官ガイドブックを発行しました。全国で初の試みで、日弁連からも使いたいとの申し出を頂いています。

裁判官は、弁護士経験もあるベテランの法律家がなるのがよいという考え方から、アメリカ、イギリスでは、そうなっています。韓国も、今年1月から、その制度(法曹一元制度)に切り替えました。日本では、学校を出てすぐに裁判官になるという制度が戦前から続いていますが、この度の司法改革で、多様化を図ることになり、弁護士からの任官を大幅に増やすことが決まりました。しかし、現在、2800人の裁判官のうち、弁護士経験者は63人(2.2%)に過ぎません。

弁護士と裁判官は、試験も資格も同じですが、仕事が違います。弁護士が裁判官に任官するには、事務所をたたむか、退職することになるうえ、どの程度忙しいのかとか、判決を書く技術はマスターできるかとか、転勤はどうだろうか、あるいは給与はどのくらいかなどの疑問や不安もあります。

私は、3年前から近弁連の弁護士任官者を選考する委員会の委員長をしています。昨年夏に、任官推進を進めている委員会で「近畿の弁護士会から裁判官になっている人が16人おられるので、その人たちに後輩のための手引き書を書いてもらう企画はどうか」と提案しました。そして、現役任官者の人たちに相談すると、「よい企画だ」、「うれしい話しだ」と言っていただき、「善は急げだ」といって土曜日に打ち合わせに来ていただける裁判官もありました。

この度、できあがった「任官への道しるべ」(任官ガイドブック)は、現役の裁判官たちが、7つの項目について、経験に基づいたアドバイスを書いています。裁判官の仕事のやりがいと、弁護士を経験した者が裁判官になることの意義を書いておられ、少なからず感動しました。弁護士任官者は、訴訟代理人と裁判官の両方の苦労や経験がありますので、裁判官制度の改革や、民事裁判の改善でも、大きな役割を果たしていただけるものと期待しています。

未だ弁護士から裁判官になる人は少なく、毎年、全国で5人程度ですが、韓国のように法曹一元制度を導入しますと、裁判官になる弁護士を飛躍的に増やす必要があります。この任官ガイドブックが、今後、法曹一元に向かうときの手助けになることを期待しています。(弁護士 松森 彬)