私たちの事務所は、これまでは松森と高江の2名の弁護士が共同して運営していましたが、今年(2017年)11月に弁護士法人西天満総合法律事務所を設立し、法人として弁護士業務を行うことにしました。法人の代表には、高江弁護士が就任しました。
病院や診療所で医療法人という言葉をお聞きになったことがあると思いますが、弁護士法人は2002年にできた比較的新しい制度ですので、ご存知ない方も多いと思います。それまでは複数の弁護士が共同で運営している事務所(法的には組合になるかと思います)はたくさんありましたが、法人制度はありませんでした。
それは、一つには、弁護士は依頼者の権利・利益を守るために他から圧力を受けることなく、裁判官のように業務の独立性が必要だと考えられてきたことが理由です。独立してする仕事で法人組織はなじまないと考えられてきました。もう一つは、個人的色彩の濃い仕事であることが影響していたと思います。アメリカでも、法律事務所の名称は創業者の個人名を付けている事務所が多いようです。その理由をアメリカの弁護士に聞きますと、この仕事は依頼者と弁護士との個人的なつながりが重視されているからだと思うという説明でした。そして、アメリカでも弁護士法人が認められたのは、それほど昔ではなく、認めるかについて消極説もあったと聞きました。それは、会社のようになると、弁護士が依頼者の方を向いて仕事をするのではなく、上司や会社を気にして仕事をするのではないかという危惧からでした。しかし、弁護士が一人で仕事をするのには限度もあり、共同で相談しながらすることが仕事の質や量を高めることは事実だと思います。日本でも、議論のうえ、15年前に弁護士は弁護士法人をつくることができるようになりました。日本には今でも法律事務所がない弁護士過疎地がありますが、そういう所に支店の事務所を出せるのもこの制度の意義の一つだと思います。2017年11月1日現在、全国に1087の弁護士法人ができています。ちなみに現在の日本の弁護士数は3万8843人です。2015年の統計ですが、弁護士法人に所属している弁護士(社員及び従業員)の率は13.2%です。
私たちの事務所が法人にしたのは、個々の弁護士が共同で仕事をするだけでなく、法人とすることで、共同化を進め、業務の質と量の向上をはかり、基盤の安定化と事務所の継続性に役立つと考えたからです。それにより、お客様に、さらに安心、信頼をしていただけるのではないかと思います。私が若いときに仕事をしていました事務所(堂島法律事務所)も50年程前に3人の志のある弁護士が、これからの時代は一人ではなく共同して良い仕事をするべきだという考えで設立した事務所でした。私は20年在籍しましたが、その考えに共鳴していました。
私たちの事務所の名前も、これまでの私と高江弁護士の名前(松森・高江法律事務所)から、「西天満総合法律事務所」に変えました。西天満は、大阪天満宮の西にあたるところから付いた地名です。大阪の裁判所や弁護士会がある地区で、私どもの事務所も1991年の設立以来、西天満にあることから、この名称にしました。
弁護士法人の役目について弁護士法に特に定めはありませんが、医療法は、医療法人の目標を次のように定めています。「医療法人は、自主的にその運営基盤の強化を図るとともに、その提供する医療の質の向上及びその運営の透明性の確保を図り、その地域における医療の重要な担い手としての役割を積極的に果たすよう努めなければならない。」と定めています。弁護士法人としても参考になる目標ではないかと思います。弁護士法人を設けた私たちは、事務所の基盤の強化と、法律業務の質の向上をはかり、司法サービスの担い手である弁護士としての役割を積極的に果たしていきたいと思っています。(弁護士 松森 彬)