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「裁判員をしてよかった」が98%

最高裁は、11月17日、裁判員を経験した人に対するアンケート結果を公表しました。最高裁のホームページにも掲載されています。

回答した裁判員経験者は、今年8月と9月に判決が言い渡された14件の裁判で判決に関与した84人のうちの79人です。裁判員をしてよかったという感想が圧倒的に多いのが印象的です。裁判員に選ばれる前は、「積極的にやってみたい」「やってみたい」と考えていた人は24%しかなく、「やりたくなかった」「あまりやりたくなかった」が57%でした。ところが、終了後は、「非常によい経験と感じた」が65%、「よい経験と感じた」が33%で、計98%が肯定的でした。

私は2000年と2001年にアメリカの陪審の調査に行きましたが、アメリカでも、陪審員をする前は、いやだと思っている人が多いのですが、経験した後は、やってよかったという意見が多いということでした。

日本でも、起訴の是非を検討する検察審査会の委員を経験した人の調査で、経験してよかったという人が多かったので、裁判員制度も、きっとそういう感想を持つ人が多いだろうと思っていましたが、98%という数字は、驚きです。もっとも、11月に堺支部で行われた裁判員裁判では、5人の裁判員が、もうしたくないと言ったということですから、細かい分析が必要です。また、無罪を争う事件などは、ここには含まれていませんので、本当の試金石はこれからです。

ただ、全体としては、弁護士会が実現に向けて努力した国民の司法参加の制度は、順調な船出をしたと言ってよいように思います。法廷での審理は「わかりやすかった」という答えが、75%を占めました。国民の司法への参加に当初は消極的だった裁判所も、導入が決まってからは、わかりやすい審理にする努力をしてきました。アンケート結果は、まずは法曹三者の努力の結果を認めたものだと思います。

トクヴィルという思想家は、陪審について「民主主義の学校」と言いました。裁判員制度ができて、裁判について話す機会が増えたように思います。裁判員をしてみたいという声も聞きます。国民の司法への参加制度は、司法を変えるだけでなく、政治を変える可能性もあるように思います。