西天満総合法律事務所NISITENMA SŌGŌ LAW OFFICE

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不正は司法では通らない(不正軽油事件)

忙しさにかまけて暫くブログをご無沙汰していました。最近、お客様と友人から「読んでいますよ」と言っていただきました。どれだけお役に立つ情報になっているか分かりませんが、裁判や法律のことで気付いたことを書いていくようにいたします。

2日前に、大阪の高等裁判所で、全面勝訴の判決をもらいました。これは、石油販売業者が、軽油を注文した運送会社に、灯油を混ぜた軽油を売り、代金請求をしたという事案です。

私の事務所は軽油を買っていた運送会社から依頼を受けました。石油販売業者が、なぜ、このようなことをしたかというと、軽油には軽油引取税という税金がかけられていますので、税金のかからない灯油を混ぜて、その分利益を得るためです。この不正軽油は、製造や売却が禁止されており、府税事務所と警察が取り締まりをしていますが、跡を絶ちません。

石油販売業者は、「これは例外的に北海道等の寒冷地向けに製造販売が認められている正規の軽油(3号軽油)を納めたものである」とか(事実はそうではないのですが)、あるいは、灯油を混ぜた軽油でも一定程度は燃料としては使えますので「経済的価値はある」などと主張して、代金を請求しました。

裁判所は、判決で「買主は、通常の軽油を注文したのであり、法律が禁止している灯油を混ぜた不正軽油を、通常の軽油と装って売ったときは、詐欺にあたる」として、代金の請求を棄却する判決を言い渡しました。

買主の社長は、灯油が混ざった不正軽油であることが分かったので、残代金の請求を拒み、何人かの弁護士に相談されたそうです。ただ、回答は、「燃料として使えたのであれば、後は脱税の問題が残るだけではないか。税金のことは役所しか言えない」と言われたそうです。その社長は、それでは不正がまかりとおると思い、当事務所に相談してこられました。

私は、社長の正義感がわかりましたので、事務所の3人の弁護士で相談しまして、「脱税した不正軽油は、製造したり売却したりすることが禁止されているものであり、そのような商品を売ったときは、詐欺が成立すること」を主張することにしました。この度の判決は、不正軽油を売ってもお金の請求はできないことを明らかしたもので、不正軽油の横行について司法として毅然とした判断を示したと思います。(弁護士松森 彬)

(追記)
この大阪高等裁判所の判決(平成23年10月27日)に対して、相手方(石油販売業者)は最高裁に上告と上告受理申立をしましたが、最高裁(第一小法廷)は、平成25年4月25日に上告を棄却し、上告受理申立は不受理とする決定を出し、当方が勝訴した高裁判決が確定しました(このブログの2013年5月4日の「最高裁で勝訴しました(不正軽油)」に書いています)。大阪高裁の判決、最高裁の決定、1審の奈良地方裁判所の平成22年10月28日の判決(この判決は石油販売業者の言い分を認め、当方は敗訴の判決でした)は、いずれもウェストロー・ジャパンという判例集に掲載されています。同種の事案の参考になると思います(令和7年5月9日加筆 弁護士 松森 彬)。