西天満総合法律事務所NISITENMA SŌGŌ LAW OFFICE

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弁護士費用は相手に請求できるか

裁判を弁護士に依頼した場合、弁護士費用は相手方に請求できるでしょうか。

法律の規定はなく、解釈に委ねられています。判例は、交通事故や、公害、暴力行為など、不法行為と言われる場合の損害賠償請求については、弁護士費用も損害として認めています。弁護士に支払う額のうち一定部分の支払いを相手方に命じてくれます。裁判は弁護士に委任せずに本人でもできますが、実際には一般の人が一人で裁判手続をすることは困難だからです。

それでは、売掛金や工事代金など、債務不履行と呼ばれる場合の損害賠償請求はどうでしょうか。学者は、債務不履行でも、容易に相手から支払いを受けられず、裁判を余儀なくされたときは、弁護士費用の一定部分が損害として認められてよいとしています(奥田昌道「債権総論」(上)208頁)。不法行為による損害賠償請求の場合に弁護士費用を損害と認めた最高裁昭和44年2月27日判決も、債務不履行の場合の弁護士費用を否定していないようにも読めます。 ただ、金銭債務の不履行の場合について、最高裁昭和48年10月11日判決は、弁護士費用を損害として認めませんでした。その後、最高裁判決平成24年2月24日は、労働者が労災事故で負傷して会社を安全配慮義務違反で訴えた裁判で、弁護士費用を損害として認めました。このように、判例も債務不履行の一定の類型については認めています。 弁護士は、判例が範囲を広げるように努力すべきだと思います。

私は、何度督促しても相手方が支払いをしないなど悪質な債務不履行がある場合は、裁判に要した弁護士費用は損害と認めるのが公平に適うと思います。 私は、先日、工事業者が3年間繰り返し工事代金の支払を求めたのに注文主が支払いをしないという事件を頼まれました。裁判では、弁護士費用も含めて請求しました。裁判所での和解(示談)で、相手方は分割払いを希望しました。私は、その点は応じるとともに、弁護士費用も含めた額の支払いを求め、相手も応じました。また、途中で分割払いが滞ったときは違約金を支払うという特約も入れました。当事者の方にとって、ある程度納得のいく解決になったと思います。 (弁護士松森彬)