毎年この時期は弁護士会が主催する夏期研修があります。今日は、「離婚訴訟の進め方」がテーマでした。最近の離婚訴訟の実情や問題について、講師(園部伸之判事)のお話しを聞いてきました。
離婚訴訟で争点になるのは、離婚をするか否かだけでなく、慰謝料や財産分与をどうするか、子の親権者や監護者をどちらにするか、子との面会をどうするかなども決める必要があります。自宅がローン付きの場合にどう分けるか、あるいは不貞の相手に対する慰謝料請求をどう決めるかなどの問題があることもあります。
弁護士と裁判官は、これらの多数の問題を、どのような手続で、どう取り上げて解決をはかるかに心を砕くことになります。全部の一体解決が望ましいですが、親権者や面会の問題が一番対立しているようなときは、それを別の調停手続にして先に解決をはかることもあります。
最近、離婚訴訟は長くかかる事件が増えていますが、原因は財産分与の紛争が増えているからだと思うとの講師の説明でした。夫婦が結婚してからできた不動産や預金などの財産は夫婦で分けることになりますが、結婚前から持っていた財産や親から相続した財産などは分与の対象にはなりません。そこで、財産分与の対象になるかどうかがまず問題になります。また、相手が管理している財産を明らかにしないこともあります。そのようなときは、裁判所に申し立てて銀行などへの調査を依頼することができます。
親権者・監護者について争いがあることもあります。どちらが親権者や看護者になるのが適切かについて裁判所の調査官が調査をします。10歳以上の子の場合は子の意見を聞くこともあります。
裁判官が和解案を作って双方に提案し、双方が受け入れて解決することもありますが、和解がまとまらないときは、本人尋問をします。本人尋問では、双方が経過を予め陳述書に書いて出したうえ、1時間位、法廷で証言をすることになります。
民法や人事訴訟法などの法律は、離婚を認める基準や裁判手続の一般的なことを決めているだけですので、実際の裁判で、どのように進めるかは、裁判官と弁護士がどれだけ知恵を絞り、努力するかで決まってきます。今日の講師を務められた裁判官は10年目の若い方でしたが、代理人・当事者と一緒に、できるだけ納得のいく手続をしようとしておられるのがわかりました。実務家のやりがいや責任を感じた研修でした。(弁護士 松森 彬)