日本弁護士連合会(日弁連)の会長選挙が2月9日にあり、東京の渕上玲子弁護士(69歳)が次期会長に選ばれました。任期は4月から2年間です。
裁判所、検察庁を含む法曹三者で女性がトップに就くのは初めてです。日弁連は戦後の1949年の設立で、75年の歴史がありますが、女性の会長が初めてというのは恥ずかしいことです。
女性の弁護士は、かつては人数も少なく、30年ほど前は5%程度でした。その後、司法改革の影響もあり、今は20%(4万5868人のうち9212人)に増えています。
日弁連は、かねてから女性の役員を増やす努力を続けており、2013年にクォーター制を導入して、それまでの副会長15人を2人増やし、その2人は女性枠にしました。そこで、現在、17人の副会長のうち3人が女性弁護士になっています。クォーター制は逆差別であるなどの批判もあるようですが、外国でも政治の世界などで着実に成果をあげているようで、私も有効な政策だと思います。
ただ、会長は、直接選挙で選ばれますので、全国を遊説する必要があり、選挙費用がかかることや、2年間の激務があることから、これまで成り手がありませんでした。今回は、女性の会長を出したいという多くの弁護士の思いがあったのではないかと思います。
渕上玲子弁護士は、会長として掲げる目標の一つに選択的夫婦別姓制度(夫婦が別々の姓を名乗ることを選択できる制度)の実現を掲げています。法制審議会が1996年に提案している制度ですが、未だに実現していません。「働く女性が増えているのに制度が変わらない。しつこく声をあげたい」と言っておられるようです。
松田道雄氏は、かつて「私は女性にしか期待しない」という本(岩波新書)を書かれました。男性が企業社会に組み込まれ、しがらみにとらわれて、変わろうとしない問題を指摘した本でした。渕上弁護士の活躍を期待しています。
最高裁の長官や検察庁の検事総長も、これまでは男ばかりでしたが、最近は女性の裁判官、検察官も増えています。日弁連に続いていただきたいと思います。
それにしても、日本の男女格差をなくす動きは遅々としています。世界経済フォーラムの「世界男女格差報告書2023年版」によりますと、日本のジェンダーギャップ指数は、146か国中125位で、昨年よりランクがさらに下がったようです。先進7か国(G7)の中で、とびぬけての最下位で、アジアでは中国や韓国にも劣ります。特に、政治の分野で、男女格差をなくす努力が求められています。(弁護士 松森 彬)