司法に国民が参加する制度として、刑事裁判に「裁判員制度」ができたことは、多くの人が知っておられると思いますが、「裁判所委員会」という名前を聞かれたことはありますか。
裁判所委員会は、裁判所の運営に国民の声を反映させるため、2003年に全国の裁判所に設けられました。これまでの裁判所は国民から距離があると言われてきましたが、各地の裁判所の運営に国民の意見を反映させ、国民主権の裁判所にすることがねらいです。大阪地裁委員会の場合、マスコミ、学者、地方自治体、消費者相談員など市民12人と、弁護士、検事各1人、裁判官2人で構成されています。
近畿弁護士会連合会は、毎年、近畿各県を回って「みんなで育てよう裁判所委員会」というシンポジウムを開いています。今年は3月6日の土曜日に和歌山で開かれました。私は、大阪弁護士会の推薦で、1期目と2期目の大阪地方裁判所委員会の委員をしましたので、シンポジウムに参加してきました。
関西学院大学の丸田隆教授の講演や、和歌山の裁判所所長の報告などがあり、その後意見交換がされました。各地の裁判所委員会では、裁判員裁判や、裁判所の受付、案内などが取り上げられ、その結果、改善が図られたこともあるようです。議論は、裁判所のホームページに掲載されていますので、一度、ご覧ください。
日弁連が全国の元委員に対して行ったアンケートでも、59人の回答のうち55人が「委員になって良かった」という感想ですから、制度自体に意義はあると思います。ただ、6日のシンポジウムでは、開催回数が少ないことが問題になりました。年2回と少ないところもあり、「前の議論を忘れてしまう」という声が出ていました。裁判所は、予算や準備の手間を理由に回数を増やさないようですが、少なすぎると制度は形骸化します。
アメリカのニューヨーク州などでは、コートモニターという住民の任意団体があり、ボランティアで裁判所の調査や提言をしているようです。日本でも、裁判所委員会の活性化を図るとともに、もっとウェブを利用するなどして、裁判所や司法に対する国民、利用者の声が高まっていけばいいなと思います。(松森 彬)