最高裁は、2004年(平成16年)から、裁判官の人事評価の客観性を高めるために、弁護士など外部からの情報を受け付けています。ただ、最高裁の制度では情報の内容は公表されませんので、どのような意見が寄せられたかはわかりません。そこで、大阪弁護士会は、3年前に、弁護士が裁判官の審理や仕事ぶりについて弁護士会に意見を出せる制度を設けました。記録の把握、争点整理、証拠調べ、和解、判決、話し方・態度、総合評価の7つの評価項目について5段階で評価して意見が出せるようにしています。
今年は弁護士から合計298通(民事裁判官について174通、刑事裁判官について124通)の意見が寄せられました。大阪弁護士会の月刊誌6月号に「裁判官評価情報の集計と分析3~弁護士が見た裁判官のすがた~」が掲載されましたので、主に民事部の裁判官についてご紹介します。
地裁の民事部の裁判官(本庁と支部合わせて140人)については、弁護士98人から計174通の評価意見が寄せられました。総合評価について「大変良い」と「良い」の意見が計69通あり、「大変悪い」と「悪い」が計38通あったとのことです。また、高裁の民事部の裁判官(66人)については、「大変良い」と「良い」が計12通、「大変悪い」と「悪い」が計9通でした。
評価点数が高い民事部裁判官の上位10人は、平均値が4.34以上と高い点数でした。内訳は、地裁本庁8人、支部1人、高裁1人でした。上位10人についての評価理由を見ると、「温厚であり、丁寧だった」「双方の言い分を十分に聞いてくれた」「どちらか一方に与することなく、話し方も丁寧であった」「当事者が不公平感を持たないように配慮している様子がうかがえ、非常に好感が持てた」「双方の意見の対比表を作成するなど、文言の細かな詰めも誠実に行っていた」「暫定的心証を適切に開示し、次回以降の双方の課題を上手に導いてくれた」などだったそうです。
下位の10人の裁判官は、平均値が2.83以下と低い点数でした。評価理由を見ると、「不当に尋問に介入し、高圧的でとりつくしまもない」「感情的になって早口になり、何を言っているのかわからなくなる」「公平な態度を守るという基本を忘れている」「自分の思い通りにいかないことが起きると、不機嫌な表情と態度に出る」「周囲の意見が耳に入らない強権的な訴訟指揮をした」「極めて高圧的であった」「独断を押しつけて和解を勧めた」などであったそうです。
評価が高い裁判官と低い裁判官を比べますと大きく開きがあります。これは、大阪弁護士会が約20年前(1998年)に行った調査でも同じことが言えました。そして、この調査は3年目になりますが、評価の高い裁判官は継続して高く、残念ながら低い人は継続して毎年低い傾向を示しているようです。
まだまだ回答数が少なく、集団としてのおおよその傾向を示すものにとどまっており、個々の裁判官の評価を示すものにはなっていませんが、裁判官にも色々おられ、仕事ぶりも区々であることが明らかになったと思います。国民が信頼できる裁判官像を明らかにして、そのような裁判官を増やすために、この調査は今後も続けてもらいたいと思います。(弁護士 松森 彬)