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評価が高い裁判官、低い裁判官(4年目の調査)

大阪の裁判官の審理の仕方について弁護士が評価した結果が大阪弁護士会の月刊誌(2018年6月号)に掲載されました。この取り組みが始まって今年は4年目になります。どのような意見が多かったかをご紹介します。

大阪の高裁、地裁、家裁で民事事件と家事事件を担当している裁判官は全部で204人です。評価は、記録の把握、争点の整理、証拠調べ、和解、話し方態度、判決、総合評価の7項目について5段階で評価します。その理由も記載します。今年は弁護士87人から196通の意見が寄せられました。

大阪のような大都会では、裁判官の人数が多いので、一人の弁護士が同じ裁判官にあたることは少なく、1回だけのこともあります。また、評価情報を寄せるのは、大変良かったときか大変悪かったときが多いと思います。そういうこともあり、今年も意見が寄せられたのは、全体の半分弱の84人の裁判官についてでした。

複数の意見があった裁判官46人について、特徴を言いますと、評価の高い裁判官と低い裁判官があり、その差が大きいことです。国民の多くの人は、裁判官はみんな文句のつけようがない人ばかりと思っておられるかもしれませんが、そうではありません。上位13人は平均点が4点以上でしたが、下位の6人は平均点が2点台でした。4年間にわたる調査で、上位の裁判官は継続して上位にランクされ、下位の裁判官は継続して下位にランクされる傾向が認められたそうです。裁判官は裁判官の独立を保障するため、10年間は首になることはありませんが、仕事が仕事であるだけに、両方の訴えをよく聞いて、公正で十分な審理をしてもらう必要があります。

1位となった裁判官の評価理由には、「毎回、期日前に双方の主張をまとめた暫定的な争点整理案を送付し、当日は認識に齟齬がないかを確認している」、「当事者の話に耳を傾け、気持ちをくみ取ろうとしている」などの意見がありました。

また、評価が低い裁判官は、「記録を十分に検討せず、和解を押しつける」、「先入観にとらわれ、心証を固めるのが早すぎる」、「感情的になる。高圧的な話し方をする。」などの理由が付されていました。

高裁の裁判官については厳しい評価になっているようです。「説得的な判決であった」とか、「本人の意見も聞いて和解の勧告があり、良かった」などの高い評価がある裁判官がある一方で、「判決が争点に全く触れていない」、「重要な争点であること予告しているのに、取り合おうとしない」などの不満がありました。1回結審が多く、当事者とのコミュニケーションが十分とれていないことも背景にあると思います。

大阪高裁と地裁で刑事事件を担当している裁判官は93人です。弁護士47人から164通の意見が寄せられました。項目は、身体拘束、公判前整理、証拠調べ、訴訟指揮、話し方・態度、判決、総合評価の7項目です。2通以上の意見があったのは36人の裁判官についてで、平均4点以上が10人おられる一方、2点台が7人でした。刑事事件を担当している裁判官も、高い評価の人と低い評価の人の差が大きいことがわかります。

評価点数が高かった10人のうち6人は4通以上の情報提供があり、多くの弁護人から共通して高い評価を受けていると言えます。

今回は、評価した理由が書かれていたものが多かったそうです。裁判官の言動を批判する評価がある一方、裁判官の発言やふるまいに弁護人や被告人が感銘を受けたという意見も多く寄せられました。今回のまとめにあたった委員の弁護士は、どのような裁判官が理想的な刑事裁判官であるのかという根本的な問いに対する解答がこれらの意見に含まれているように思うと感想を述べています。

弁護士も、依頼を受けた当事者・国民に代わって、その件の事実経過と法律の適用をわかりやすく裁判官に説明し、当事者とは聴取、報告、協議等を頻繁に行って、早期に適切な証拠と文献などを提出するとともに、相手方に事実の説明や資料提出を求め、裁判官が正確に事実関係と適用すべき法律論を理解し、ましてや誤解をするようなことがないように注意を払い、その事件の迅速で適切な解決に向けて努力すべき義務があります。同じ事件はなく、すべて異なり、代理人・弁護人がすべきことは限りなくあると言ってよいと思います。今年の報告を読みまして、この取り組みは裁判官の仕事ぶりの向上に、さらには弁護士の民事代理人、刑事弁護人としての仕事の反省や向上にもつながるものだとの思いを強くしました。(弁護士 松森 彬)