裁判では、証拠書類だけで事実が明らかという場合もありますが、争いになっている事件の多くは、当事者や関係者の尋問で事実を明らかにすることになります。そこで、弁護士にとって、尋問をどのように行うかは重要です。
私は、今年、大阪弁護士会の研修の委員長をしていますが、このテーマの研修を企画しましたところ、先日(8月31日)の研修には、460人の弁護士の参加がありました。講師には、ふだん弁護士の尋問をたくさん見ておられる地裁の裁判長(小西義博判事)にお願いし、「裁判官から見た民事裁判における尋問」というテーマで話をしていただきました。
小西判事は、裁判における尋問の重要性を指摘され、弁護士は事前準備を十分に行い、尋問技術をさらに磨いてほしいということです。
弁護士が自分が依頼を受けている側の関係者の尋問を行うとき(主尋問といいます)では、誘導尋問が禁止されているのですが、「誘導すると証人の真の記憶かどうかわからない。相手方が重要な個所で誘導尋問をしたときは、異議を言うことも必要だ」とか、「裁判官としては、他の証拠との整合性が気になるので、反対尋問では、その点を問題にするのがよい」とか、「反対尋問がうまい弁護士は、証人の言うことを聞く耳と、真実を答えさせる迫力がある」とか、「陳述書は、双方異なることも多く、作文もあり、記憶違いを固定化しているおそれもあり、問題点が多いので、重要なところは聞いてほしい」など、興味あるお話がありました。
若い弁護士だけでなく、ベテランの弁護士も多数出席されていましたが、弁護士が尋問技術を向上させ、裁判官が事実認定能力を向上させることで、民事裁判をさらに国民に納得の得られるものにしたいものです。