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大飯原発と高浜原発の再稼働は認められないとした裁判

 

原子力発電については、以前から外国でも推進、廃止、あるいは導入しない、段階的廃止などいろいろ議論がされているようです。原子力発電は二酸化炭素を発生しないなどの長所もありますが、放射性廃棄物の処理の問題があり、又、いったん事故が起こりますと、放射能が拡散し、とりかえしのつかない被害が生じます。かつてアメリカでスリーマイル島の原発事故があり、ソ連でチェルノブイリの原発事故がありました。そして、2011年(平成23年)3月11日に福島第一原発事故が起こり、被害は甚大で、15万人の住民が避難生活を強いられました。

 

原発の建設・運転については、これまでからいくつもの訴訟がありました。1973年に提訴された伊方原発1号炉の訴訟が最初で、その後、福島、東海、もんじゅ、柏崎刈羽、ウラン濃縮施設、女川、志賀、泊などの原発について訴訟が行われました。ただ、もんじゅ訴訟の名古屋高裁金沢支部の判決(その後最高裁で破棄)と志賀原発の金沢地裁の判決(その後高裁で破棄)の判決は住民の主張を認めましたが、この2件以外の判決は、具体的な危険が差し迫っていると言えないなどとして住民の主張を認めませんでした。

 


しかし、福島第一原発事故の発生により、原発は大地震に耐えられると言ってきた国や電力会社の主張に疑問が出てきました。

そして、昨年(2014年)5月21日、福井地裁は、福井県おおい町にある大飯原発3、4号機について、地震に対する設備や技術が十分でないとして再稼働を認めないとする判決を出しました。

さらに、福井県高浜町にある高浜原発3、4号機の再稼働について、住民が差し止めを求めていた仮処分事件について、福井地裁は、今年(2015年)4月14日、耐震安全性が確保されていないなどとして、再稼働してはならないという仮処分決定を出しました。

 


新聞によりますと、ある経済人は、地方の裁判所が国の重要な政策を論じるのはおかしいという意見を述べられたようです。この意見は、司法の役割について正確な理解をされていないように思います。国の権力は三権分立とされ、行政のする行為についても裁判が可能です。そこで仮に国策といえるような重要な施策に関係する事柄であっても、個別の案件について、それが憲法や法律に触れるかどうかを裁判所は審理することができます。ドイツの連邦行政最高裁判所も、1998年、ある原発の設置について、地震の危険を十分に評価していないという理由から設置を認めないとした下級審判決を支持する判決を出しています。

昨日(4月19日)発表された日本テレビの電話世論調査によりますと、高浜原発の再稼働の差し止めを認めた福井地裁の決定を「支持する」が65.7%で、「支持しない」が22.5%で、裁判所の判断を支持する人が多いようです(対象1997人、回答率50.4%)。

裁判は電力会社が不服申し立てをしましたので、さらに事実認定と法的解釈の検討が深められると思いますが、国民の多くは原発の再稼働に慎重で、安全性が真に確保できているかを十分に検討してほしいと考えておられるようです。(弁護士松森 彬)