今、中小企業は厳しい状況に置かれています。売掛金が回収できなくなり、運転資金が必要になったとか、担保不足で銀行借入ができないとか、資金繰り、資金調達に困られることも少なくありません。
ふだん会計や税務のことは税理士に相談されているようですが、資金の窮余が進んでいるときは、弁護士に相談していただくのがよいと思われます。それは、会社経営が行き詰まったときの選択肢としては、自力再建、私的整理、第2会社方式、会社売却、事業譲渡、民事再生法、会社更生法など、さまざまな方法がありますので、どの選択肢をとるかを総合的に検討する必要があるからです。
先日、弁護士会で、中小企業の資金繰りと資金調達の勉強会があり、参加しました。昨年、日弁連と日本政策金融公庫(以前の国民生活金融公庫と中小企業金融公庫などが統合)は、中小企業支援について協力することを確認し、法律面と金融面から連携して支援しようとしています。
公庫や銀行が中小企業への融資を渋るのは、大会社の場合は財務諸表が監査法人の監査を受けていて信頼性が高いのに対し、中小企業の決算書は信頼性がそこまで高くなく、企業の内容、体力などがよくわからないからのようです。
経営者は、融資を受けるときは、会社の経営課題を認識し、改善策を立てて、それを銀行に適切に説明することが求められます。
その場合、「資金繰り表」と「経営計画表」の二つが重要であると思います。これは、単年度でなく複数年度を対象にして、売上げ、経費、設備投資、公租公課、借入金返済などを予想して、資金計画と経営計画を立てることです。
日々の会計や税務計算ができていても、それだけでは単なる過去の実績表示にとどまり、将来の予想や計画を立てたことにはなりません。資金計画と経営計画を立て、このシュミレーションを繰り返すことは、融資を受けるためだけでなく、自主再建するためにも大変役に立つことであると思います。(弁護士 松森 彬)