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年頭の新聞社説を読んで(ウクライナ侵攻)

明けましておめでとうございます。

コロナ感染症は日本で見つかってまもなく3年になります。最近も毎日多数の感染者が出ていますが、行動制限がなくなり、だいぶ元の生活が戻ってきました。

各新聞(朝日、毎日、読売、産経、日経)の年頭の社説を読みました(産経は社説がなく論説委員長の主張)。今年はどの社説もロシアによるウクライナへの侵攻の問題を取り上げています。そして、改めて民主主義の意義を指摘しているのが印象的です。

昨年の正月はウクライナでの悲惨な戦争は起きていませんでした。ロシアのプーチン大統領がウクライナに軍隊を侵攻させたのは10か月前の2022年の2月です。アメリカ軍のトップは、2022年11月、ロシアとウクライナの死者及び負傷者の総数はそれぞれ10万人にのぼるだろうと言っています。欧米のロシアに対する経済的な制裁などによって、金融、食料、エネルギーに影響が出て、世界中の人が物価の高騰などの被害を受けています。文化も文明も進んだと思っているこの時代に一人の強権的な指導者が戦争を起こし、誰もそれを止めることができないことに、日本でも多くの人が愕然としました。

社説は各新聞の論説委員らで議論してまとめられたものと思われますが、私が印象に残った意見・提案を記載します。

① 国家の暴走を止めるための仕組みとして、17世紀から世界連邦制や紛争解決の裁判所、諸国家の連合などが提唱され、国際連盟が具体化し、第2次大戦後に国際連合ができた。ただ、5つの大国に拒否権があり、ロシアの侵攻に有効な策を打ち出すことができていない。「戦争を未然に防ぐ確かな構想」を打ち出す必要がある(朝日1月1日社説)。

② 戦争を止めるのは容易でないが、国際社会が結束して圧力をかけ、翻意を促すしかない(毎日1月3日社説、読売1月3日社説)。ロシアのウクライナへの侵攻を一刻も早く終わらせ、国連や世界貿易機関など国際機関の機能を回復しなければならない(日経1月1日社説)。「国際世論」は無力ではない。国際世論の高まりが、穀物輸出の封鎖、原子力発電所への攻撃などの最悪事態を部分的ながら回避させ、改善策が講じられている(読売1月1日社説)。

③ 「民主国同士が戦争をした例はほぼない。民主主義を守り育むことが必要である。」民主主義は政治的な共存の一つのあり方である。最終的な解決というようなものはなく、常に暫定的な決定を重ねていくしかない(朝日1月3日社説)。独裁者の暴走を防ぐ必要がある。民主的社会なら為政者が判断を誤っても周辺が理不尽な行動を止めるだろう。自由な民主社会こそが平和を守る。しかし、民主主義国家の人口は世界の45.7%で、半分にも及ばない。(読売1月1日社説)。

④ 民主主義国でも、政治指導者が強権的手法を取る「内なる専制」の拡がりがある。日本でも危機を口実にした議会軽視がある。専守防衛に基づく安全保障政策の大転換が、国会での熟議抜きに決定された。国民的議論を欠いたのは原発の新増設方針も同様だ(毎日1月1日社説)。(弁護士 松森 彬)