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宮本憲一名誉教授が日本の公害の教訓を本にされました

宮本憲一さんは、大阪市立大学名誉教授、滋賀大学名誉教授で、財政学と環境経済学の学者です。全国で公害問題が発生してきた1964年(昭和39年)に「恐るべき公害」という新書を庄司光教授と書かれました。その後、日本が公害にどう取り組むべきか、どう取り組んできたかを研究してこられ、昨年、「戦後日本公害史論」(岩波書店)を発刊されました。

昨日、大阪弁護士会館で、出版を記念しての講演会があり、約50人の弁護士がお話しを聞きました。85歳ということですが、かくしゃくとされています。本は、日本の公害の教訓を明らかにして、今後に活かしてほしいという思いから書いたと言われます。そして、公害を克服するために努力してきた日本人の業績は、経済大国の形成に貢献した当時の日本人と同じように評価されてよいのでは、と書いておられます。

約50年程前、日本では欧米に例がないような深刻な公害が生じました。外国の学者から、日本は「公害先進国」だと皮肉なことばで言われるほど、さまざまな深刻な公害が出てきました。本では、イタイイタイ病裁判、新潟水俣病裁判、四日市公害裁判、熊本水俣病裁判、大阪空港裁判裁判、東海道新幹線公害裁判、西淀川公害裁判その他の公害裁判の紹介もされています。被害者と企業、国などの間でどのような議論があり、どのような判決があったかを、わかりやすく書いておられます。

本で紹介されている大阪空港裁判の最高裁判決(1981年)を読んでいまして、時間の経過で、最高裁判決の誤りが明らかになってきたと思いました。地裁と高裁は夜間の飛行差し止めの請求を認めましたが、最高裁は、空港は国の行政に関わるという理由で民事裁判での差し止め請求はできないと言い、却下しました。しかし、最近は関西新空港も伊丹空港も政府系とはいえ株式会社が設置管理する空港になっています。最高裁でも4人の裁判官は、私企業が空港を経営するのと同じだとして、門前払いをすべきでないとしましたが、その意見が正しかったことが明らかになってきたと思います。

地球規模で環境汚染が進み、環境問題は国際政治の課題にもなっています。日本でも原発問題、アスベスト問題や自然環境の破壊は、喫緊の課題です。公害と環境の問題、そして裁判の役割、政治と行政のあり方など、考える契機を頂いた講演会でした。(弁護士松森 彬)