西天満総合法律事務所NISITENMA SŌGŌ LAW OFFICE

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平和主義が脅かされています

ニュースで大きく報道されましたが、2015年(平成27年)9月19日土曜日の未明に、参議院で、集団的自衛権の行使として外国の戦争に参加することを認める法律(集団的自衛権の行使ができるようにする安全保障関連法)が賛成多数で議決されました。

私たち法律家にとっては信じられない事態です。というのは、日本の憲法は、第9条で、戦争と武力の行使はしないと決めています。万一、攻撃を受けたときの自衛はできるとして自衛隊がありますが、外国の戦争に行くことはないというのが憲法の定めです。憲法学者のほとんどが、この法案は憲法に違反すると言っておられます。最高裁の元長官や内閣法制局の元長官らも、憲法に違反するとの意見を出しておられます。この法案に賛成した自民党と公明党の国会議員には弁護士など法律家もたくさんおられますが、どう考えておられるのだろうと思います。

私たち弁護士や裁判官など法律家は、毎日、さまざまな法律の規定をめぐって議論をしています。条文の意味をどう解釈するか、その条文ができた立法趣旨は何かなどを、丁寧に、また、慎重に議論するのです。解釈がわかれたときは、道理はどうかという議論もします。憲法はそのような個別の法律の上にある特別に重要なルールで、憲法に違反する法律は無効になります。最高裁が、憲法に違反するという理由で無効だとした法律もいくつもあります。そんな仕事を毎日している私たちにとって、憲法に違反する法律が、こうも簡単にできてしまうのは大変驚きです。

国民で、この法律に賛成の意見は約3割で、どの調査でも、反対が5割を越えたといいます。「憲法に違反している」と思うが48%で、「違反していない」と思うの24%を大きく上回ったようです。「この国会で成立させる必要がある」という意見は2割前後しかなく、「その必要がない」が6割を越えたと言います。憲法違反でないのか、また、戦争をしないことを基本方針としてきたこの国がこれほど簡単に方針を変更してよいのか、権力を預かっている立法府の議員や政治家はもっと慎重でなければならないと思います。

アメリカのニューヨークタイムズ紙は、「海外での日本の軍事的な役割を拡大させる法律が成立」と報じたようです。フランスのルモンド紙は、「平和主義が終わる懸念」との見出しで、「海外での紛争に派兵する道を開く法律だ」と指摘し、論説で、日本のアイデンティティーであり、海外からの好イメージであった平和主義の伝統を弱めると報じたようです。

私の恩師であった弁護士は、すでに亡くなられましたが、今回の事態を知ったら、どう言われるかと考えました。大阪弁で、「むちゃ しよるな」と言われるのではないかと思ったりします。大変なときも、「なんぎなこっちゃな」と言いながら、解決を考えておられました。

法律の問題としてだけでなく、人間が一番避けなければいけない戦争という問題について、この国では、今、大変なことが起こっていると思います。一人一人が考え、また、みんなで議論をしていただきたいと思います。(弁護士 松森 彬)