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現在の四大公害・環境問題 (弁護士 松森 彬)

宮本憲一大阪市立大学名誉教授が「戦後日本公害史論」で日本学士院賞を受賞されたことを記念したシンポジウムがあり、経済学者、法学者、環境学者、弁護士などが多数参加されました。私も話しを聞いてきました(日本環境会議などが9月4日に立命館大学で開催)。

宮本名誉教授は、日本はかつての公害を乗り越えてきて、最近の学生は公害という言葉さえ知らないが、公害は再燃していて、今、4つの大きな公害、環境問題があると言われます。「未だに解決をしていない水俣病問題」、「史上最悪といえる福島の原発公害」、「多数の被害者が出ているアスベスト問題」、「沖縄最大の環境破壊が予想される辺野古基地問題」が四大公害・環境問題だと言われます(「世界」9月号に論文を書いておられます)。

当日のシンポジウムは、これらの問題について学者から報告があり、そのあとパネルディスカッションが行われました。一つ目の水俣病問題は、被害者は現在も熊本県と鹿児島県だけで約7万人もおられると推定されているようです。また、二つ目の福島の原発事故では今も9万人の離散者が出ていて、事故の賠償や回復の費用は13兆円にもなるそうです。アスベスト問題は、宮本名誉教授によりますと、この10年間に2万人の犠牲者が出ていて、今後も続くと言われます。私ごとですが、親戚に被害者がおられ,後遺症に苦しんでおられます。また、沖縄の辺野古は海にジュゴンがおり、森にも貴重な生物がいるようですが、事前に十分なアセスメントがされていないという報告でした。

宮本名誉教授は、かつての公害事件は企業に責任があったが、現在の4大公害・環境問題は政府の責任が大きいと言われます。解決策は、戦後公害の教訓が活かされるべきで、そこでは、地方自治の本旨と三権分立のもとでの司法の役割が大きいという意見を述べられました。そして、これまで公害被害の救済に役だった法理は人格権でしたが、これからは予防が大事で、環境権が認められるべきであるというご意見でした。環境権は憲法で定める必要はなく、フランスの「環境憲章」や、未定ではあるがドイツの「環境法典」のようなものが役に立つと思うという意見も述べられました。

私が大学生のころ、日本は公害列島といわれるほどに各地で公害問題が起こり、新聞には毎日のように公害裁判の記事が出ていました。それから半世紀、この国は、ひどかった公害を乗り越えて一応ここまできたのですから、宮本名誉教授も言われるように、その教訓を学び、活かしてほしいと思います。(弁護士 松森 彬)