西天満総合法律事務所NISITENMA SŌGŌ LAW OFFICE

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新型コロナウィルス感染症の問題

今、日本は、いや世界は、新型コロナウィルス感染症が人間社会に蔓延しようとしているなかで、さまざまな努力をしています。日本では、今年(2020年)1月9日に中国の武漢市から帰国した人が発症し、1月15日に新型コロナウィルス感染症とわかったのが最初でした。その後、感染者が増え、特に4月に入ってからは、一日に数百人単位の感染者が出るようになりました。わずか3か月ですが、4月21日の感染者は1万1119人、死者は186人ということです。自身が感染しないために、また、人に感染させないために、専門家は、外出を8割程度減らすことを求めており、在宅で仕事ができる人はインターネットなどを使って仕事をするテレワーク(造語)をされ、子どもたちは学校が休みになっています。しかし、食料などの物販、交通、流通、介護、医療などは、在宅でできませんので、危険と向き合って仕事をされています。

世界の感染者は、今日(4月22日)の報道機関の記事を見ますと、250万人にものぼり、死者は17万人を超えたとのことです。感染者が多いのはアメリカ、スペイン、イタリアなどです。日本では、4月7日に「特別措置法」(新型インフルエンザ等特別措置法が今年3月に改正されたものです)に基づいて緊急事態宣言が出され、休業や休校、外出の自粛などが求められています。人々は、不要不急の外出をせず、手洗いの励行やマスクの着用をして感染症が拡大しないように努力されています。司法の分野でも、5月6日まで民事裁判はすべて中止になりました。各法律事務所も開設時間を短くしたり、出勤者を減らしたりして接触を減らし、安全の確保に努めておられます。

「感染症」とは、細菌やウィルスによって発症する病気のことだといいます。風邪やインフルエンザは、誰もがかかることがある感染症ですが、結核、ヘルペス、風疹、エイズ、天然痘、マラリア、エボラ出血熱なども感染症です。1918年(大正7年)のスペイン風邪、明治時代に日本でも流行したコレラ、14世紀のペストなどのように、疫病と言われた大きな社会的打撃を与えたものもあったようです。ウィルスによる感染症は、抗ウィルス薬が少なく、抗菌剤は効きませんので、感染したときの危険が高くなるようです。感染症のなかには、破傷風のように人から人には感染しないものもありますが、多くは伝染しますので、かつては伝染病と言われていました。法律も、以前は「伝染病予防法」という名称でしたが、1999年に感染症の予防と患者の医療に関する今の「感染症法」ができました。感染症は、30年から40年の周期で世界的に大流行がありましたが、1968年の香港かぜ以来、感染症の大流行は起きていませんでした(石弘之「感染症の世界史」)。地震も感染症も忘れたころにやってくると言われる専門家もあるようですが、今回の感染症はそれにあたるのかもしれません。ここに来て、欧米では、ピークを過ぎたようで感染者の発生数が少し減っているといいますし、日本でも、ここ数日、新たに生じた感染者の数は横ばいにありますが、専門家は、危険な状態は長引くと言っておられます。百年前のスペイン風邪のときを調べますと、病気も公衆衛生の状態も違いますので、そのまま参考にすることはできませんが、日本でも2年続き、その間に3回の流行の波があったと言います。既に、生活、社会、経済などに、さまざまな被害が出てきています。命を守る最後の砦となる医師や看護師は、医療用マスクや防護服が不足するなかで医療をおこなっておられます。医療崩壊が生じないように、一刻も早い国の対応が求められます。一人暮らしをされている90代の女性が、大変だが戦争のときと比べれば我慢ができると言っておられると聞きました。比べることのできる問題ではありませんが、改めて戦争のときのご苦労に思いをめぐらすとともに、皆さんとともにこの状況を乗り切りたいと思いました。(弁護士 松森 彬)