西天満総合法律事務所NISITENMA SŌGŌ LAW OFFICE

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正月の社説を読んで

明けましておめでとうございます。今年、私が頂いた年賀状には、多くの方が新型コロナウィルス感染症のことを書いておられました。お互いを気遣う気持になったお正月でした。

各新聞の元旦の社説を読みました。各社の論説委員は、新型コロナの問題の解決を求めるとともに、この感染症の問題が明らかにした点を指摘されていました。
1つは、国際協調の必要です。世界的な問題になっている温室効果ガスによる環境問題は国際協調がないと解決できません。また、核問題もそうです。そして、昨年以来の新型コロナも、人の行き来が増えている現代では、国際協調がないと解決できないという指摘がされています(朝日、日経)。
もう一つ指摘されていた点は、政治が感染症に対応できているか、民主政治はどうか、という課題です(読売、毎日など)。アメリカでは感染者が1900万人にまで増えています(アメリカの人口は3億2700万人ですから、5.8%になります)。日本は、これまでの感染者数は24万人(人口は1億2700万人)ですが、もともと感染者対策の整備が遅れていて、医療体制が逼迫してきています。

世界では、アメリカのトランプ前大統領のようないわゆるポピュリストの政治家が増え、そこに新型コロナの問題が起きて、対応できていない面があります。日本でも政治家に対する信頼は低下しています。読売新聞とアメリカのギャロップ社が、日本とアメリカで様々な公共機関に対する国民の信頼度を調べたようで、その世論調査の結果が紹介されていました。日本では、国会の信頼度が最も低く、23%しかなかったそうです。アメリカでも国会に対する信頼は一番低かったようですが(33%)、日本はそれよりも低く、社説は、情けない限りだと書いています。日本の前首相(安倍前首相)は国会で何度もウソをついたことが新聞で指摘され(読売など)、また、説明をしない政治家が増えており、政治家への信頼が落ちているように思います。政治の重要性はいうまでもありませんが、なぜ国会や政治家が信頼されず、その事態が変わらないのでしょうか。

非正規労働者の給料の少なさや男女格差が解決しません。毎日新聞は、東京大の宇野重規教授(政治哲学)が、「日本では、どこに所属するかによって運命が大きく決定される『再封建化』といえる動きが強まっている。格差に対し、個人の力ではどうしようもないと思う感覚が支配的になっている。これが一番の危機だ。」と言っておられると紹介しています。政治や社会で、議論も説明もないままに強権的なやり方がされれば、世の中はそんなものだと、ますます国民、特に若い人の絶望、諦めが増えていくかもしれません。
もともと民主主義は手間がかかるものだ、大事なことは大変なのだと憲法学者から聞いたことがあります。毎日新聞の社説は、「民主主義は間違うこともあるが、間違えば修正ができることも民主主義のメリットだ」と書いていました。私は、日弁連が、憲法9条の問題や死刑の問題、エネルギーの問題など、いろいろな意見があるテーマについて、調査や検討を尽くし、十分な議論をすることで多くの人が納得できる着地点を見つけてきたことを思い出します。この国がかかえる様々な問題について、議論が絶えず行われる一年になることを期待したいと思います。(弁護士 松森 彬)